トラウマ

トラウマを3Dで捉える(肥満を例にすると)

肥満と言ったらこれを読んでいるアナタは何を思い浮かべますでしょうか?

ー 不健康
ー どれだけ沢山食べたらああなるのか
ー 自分の健康管理が出来ていないだらしない人

色々な言葉が出てくるのではないでしょうか?
管理栄養士的な視点からみると

ー メタボリックシンドロームや糖尿病が心配される
✅ 腹囲は?
✅ HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は?
✅ 尿にタンパク質出ていない?

ー 摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れていのではないだろうか?
✅ 食事は?(摂取エネルギー量、PFCバランス、微量栄養素、アルコール摂取量、食べるスピード、回数、時間は不規則になっていないか 等)
✅ 運動は?

になるのではないでしょうか?

二次元(2D)から判断し解決しようとすると

だから肥満を2D(平面、目に見えている範囲だけでとらえると下記のようになってしまうことが多いように感じています。

食事、運動を改善して、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを整えれば痩せるはず。
↓↓↓
それが出来ないのは本人の意思が弱く、努力が足りないから。

でも、これは私にとって16年前管理栄養士養成過程で栄養学を学び管理栄養士の資格を取った時に感じた違和感でもありました。

当時の私はBMI35の肥満(BMIの計算はこちらから)。だから心の中で肥満はそんなに単純じゃないってのがどこかで感じていて、その違和感の正体と摂取&消費エネルギーだけではない肥満に対する答えが欲しいと思い修士では肥満研究ができるラボを探し、博士では腸管免疫に関わる研究をしていました。

3Dで捉えようとすると

そしてコロナになって海外のトラウマに関するセミナーに多く出て、トラウマを深く理解し学ぶことで、私が昔アカデミアでずっと探していた答えわかる様になってきました。

人が目にするもの、目に見える主症状は、本当の問題の目印にすぎないことが多い。本当の問題は、時間の中に埋もれ、患者のしゅう羞恥心や秘密主義、そして時には記憶喪失ーさらには、頻繁に臨床家の不快感によって、隠されている
(p246-247, 身体はトラウマを記録する べッセル・ヴァン・デア・コーク)


今回はその中でも、ACEについて少しだけ書いてみました。肥満になり得る他の要因等は順次記事をあげていければと思います。

ACE(Adverse Childhood Experiences:逆境的小児期体験)

ACE研究は、虐待や機能不全家庭で起こっている項目を10個のカテゴリーでいくつ該当するのか点数化して、このACEスコアが高いほど、後々、様々な健康問題を引き起こす確率が高くなるという相関を示した研究で、海外のトラウマに関するセミナーでは必ずこの研究の名前が出てきます。(Felitti 1998

実はこの研究、当時減量プログラムに携わっていたフェリッティ先生が、プログラムの中で体重が減ったのに途中から体重が急激に増加しだした参加者に対して、(間違えて)この体重だった時は何歳と聞いたことがきっかけで始まった研究であったりもします。

病的なまでに肥満した患者のほとんどが、子供のころに性的虐待を受けているのがわかり、衝撃を受けた。また、それ以外にも多くの家庭の問題が明るみに出た。
(p240, 身体はトラウマを記録する べッセル・ヴァン・デア・コーク)

また、

ACE研究グループは、こう結論した。「[喫煙、飲酒、薬物摂取、肥満といった]適応のそれぞれは、健康に有害であると広く理解されているものの、やめるのがはなはだ難しい。だが、長期的な健康への危険の多くが、短期的には個人的に有益であるかもしれないことは、ほとんど考慮されていない。私たちは患者から、これらの『健康への危険』の恩恵を、繰り返し聞かされる。問題が解決策になっているというと、多くの人が不審に感じるのはもっともだが、生物学的システムの中には相反する力が頻繁に共存するという事実と、間違いなく一致している。
(p246, 身体はトラウマを記録する べッセル・ヴァン・デア・コーク)

拙著『【アメリカ発最新】 心の傷の仕組みを知り 自分をはぐくむ: 生きづらさを癒し、自分とお友達になるにも』の中でも言及したのですが、私はACEスコアが7あります。
(ACEスコアの算出についてはこちらの記事から

そして改めて母子手帳を確認すると、それまでは標準体重の範囲内だったのが、自分が性的虐待を受けたであろう年齢から一気に体重が増加していることが判明。そう、やっぱり脂肪というマントを着ることで自分の命を守ろうとしていた可能性があったのかもしれません。

勿論これが全ての原因であると断言してしまっては、「ダイエットを頑張らない言い訳に過ぎない」と批判される人がいらっしゃるかもしれません。

ただ、身体が安心・安全を感じれず、子供時代に唯一自分の身の安全を守る方法が太ることであると無意識下に刻まれた場合「安心・安全」が別の方法で確保され感じられるようになるまでは、本人の意思とは無関係に過去に学んだコーピング方法で命を守ろうとしてしまう可能性があるということを知って頂ければという思いでこの記事を書いています。

つまり、過去に受けた心の傷を癒し、脂肪や食べ物ではない方法で身体が安心・安全を感じられるような工夫をしていくことが出来ないと、いくらダイエットをして体重を減らしたとしても、もしかしたら減量することで求めている逆の結果に辿り着いてしまう可能性があるということです。

これはあくまでも私自身の事例及び、フェリッティ先生の研究からの一つの例ですが、肥満で苦しんでいらっしゃる方の少しでもお役に立てればと思いコラムにさせていただきました。

本当はもっとこのことについて語りたいという自分もいますが今日はとりあえずここまで。

ではまた。

他の可能性...

食べ物に依存している

(食べ物によって向きあいたくないストレス、感情、現実からの逃避)

神経系に負荷がかかっている

  • 睡眠が障害されている
  • 腸管運動が障害されている

腸管免疫・腸内細菌がストレスによって障害されている

ホルモンバランスが崩れている

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